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最後にトントンと書類を揃えると、司会者の男性が締めくくる。
「では、これにて会議は終了と致します。──くれぐれも、この事はご内密に」
その声で無言で部屋から去っていく人々。最後の1人に続いて、司会をしていた男性も廊下へと出た──
─────────
しんと静まった書斎に、低く落ち着いた女性の声が響く。身に纏うメイド服の裾が、女性の動きに合わせて揺れた。
「───と、このような状況ですが」
いかが致しますか───最後にそう締めくくり、革張りのソファーに腰掛けるウェルバートへと問いかける。
勿論、それはあの重鎮たちに対する処置の方法だ。
ふん、と軽く笑うウェルバート。本に視線を落としたまま答える。
「・・・・・放っておけ、あくまでもアイツの問題だ。・・・・・こちらが介入しては、意味が無いだろう。───それにいい機会だしな」
「了解致しました」
跪き頭を垂れる女性。流れるような動作からは、長年染み付いた忠誠心が読み取れる。
そして、一つ礼をすると数歩下がりノブに手をかける──その動きの一つ一つに無駄はない。
「ああ、そうだ」
そのまま去ろうとした彼女に、おもむろにウェルバートが口を開いた。
何か?と振り向いた女性。
読みかけの本を閉じると、ウェルバートは漸く俯いていた顔を上げた。
「───ファーファラ=ディアン個人として聞く」
そう放った言葉──それを聞いたファーファラの雰囲気が一変する。
メイド長である仮初めの姿から、本来の姿へと───
──元暗殺者へと。
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