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「紅い月──またの名を、血染めの月の日。その日の満月の色が、真っ赤なことから名付けられたっす」
兵舎の食堂でそう切り出された話。
───紅い月は年に1度だけ起こり、その日が近づくにつれて魔物が活発化する。当日の夜が1番活発になると言われ、国への侵入が起こる場合もある。
その為、紅い月の日前後の夜には、ソロランクA以上の冒険者が国周辺に配置され、魔物の討伐が命じられる。
命じられる───と言っても、この討伐には積極的に参加する者が大半だ。
その理由の一つに、紅い月の日に出現する魔物が特別だから、という理由がある。
原因は不明だが、全ての魔物が血のように赤く染まり全能力が大幅に上がるのだ。
───少なくとも推定Aランク以上。稀にSランク級の魔物も出るという。
その為、魔物の心臓である魔核も特別なものとなり──紅魔核と呼ばれる──通常よりもかなり高額で取引される。
もちろん、毛皮などの部位素材の価格も上昇する。
それは雑魚敵も例外ではない。
──例えば、だ。
通常ならば、中級冒険者2人程度で倒せる緑スライムキング(通常)。簡単に言えば、少し大きめの緑色のスライム。
ダメージが通りやすい魔法攻撃を用いらずとも、時間はかかるが物理攻撃をしていれば倒せる。
なんせ、相手には微弱な毒や酸攻撃しかないのだから対処は容易い。
とにかく弱いのだ。
───それが紅い月の日には激変する。
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