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んんんー?と、疑うように顔を覗き込んだ私に、ニヤリとウェルバートは笑った。
そして、わざとらしく少し眉をひそめると、視線を逸らして言う。
「しかし、残念だな。討伐した魔物は好きにさせてやろうと思ったのだが───」
その言葉にピクリと動く眉。
好きにしてもいい、という事は売ってもいいという事。それは即ち、好きなだけ金を稼いでいいと。
・・・・・そういう事か。
脳内で〝生命〟と〝お金〟が乗った天秤がグラグラと揺れる。・・・・・その答えは明らかである。
「ま、俺は子供に強制するほど鬼畜じゃないからな。参加は自由だ」
───どの口がそれを言うんだ。
そう突っ込みたかったが、僅かな理性がソレを抑える。代わりに出たのは了承する言葉。
「喜んでやらせていただきます」
気づいた時には自然と口に出していた。肩をすくめたウェルバートの言葉を遮る形で言葉を挟む。
「───それでいいのか」
形ばかりの驚きの言葉とは逆に、予想通りだと言うような表情。・・・・・やはり計算込みだったか。
恐らくは自主的に言わせることで、諸々の保険を掛けたのだろうが・・・・・そんなことはどうでもいい。
グッと私は拳を握りしめる。
「大丈夫です!!」
先程とは打って変わった態度。嬉々として私は即答する。
頑張れば億万長者・・・・・とまではいかないだろうが、そこそこ稼げるに違いない。
・・・・・どれ位稼げるのだろうか。
取らぬ狸の皮算用だとは自覚しているが、それを止められないのは事実。
私は指を折りながら、ニヤける口元を押さえた。
───お金はあって困ることは無い。
ゴシゴシと手で涎を拭う私を見て、クライシュが冷ややかな視線を送ってくるが気にしない。世の中は所詮、金である。
ああ因みに、とウェルバートの呟き。その何度か見覚えのある笑顔には、もはや嫌な予感しかしない。
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