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「──配置場所は王宮騎士団の横だ」
「・・・・・・・・」
───・・・・・確信犯かコイツ。あんな事があったと知っているはずなのに。
うっ、と言葉が詰まった。そう言えば、と思い出されたのはつい先程の食堂での出来事。
──〝化け物〟という言葉が頭から離れてくれない。
明らかに、向こうは私を歓迎してはいないだろう。むしろ、恐れているような・・・・・そんな視線を感じる。
上手くやれるのか、と聞かれたらその答えは否だが、これも仕事の内だと諦めるしかないだろう。
・・・・・この機会に溝が消えてくれればいいが。
「──わかりました」と何とか言葉を絞り出すと、僅かな動揺を隠しながらそそくさと退場する。
廊下に出て一息ついた私に続いて、クライシュが出てきた。バタン、と背後で扉が閉まった音がする。
──さて、紅い月の日まで残り一週間。
くるり、と一回転して振り返ると、不思議そうに首を傾げたクライシュを身体を向けた。
高揚する感情。戦闘以外で自分の力を試すのは久しぶりだ。
しかも、今回は新しい試みを試す事が出来るのである──『魔法』という新しい試みを。
くるりと回ったことでふんわりと揺れる黒髪に、裾が広がったローブ。服の下に隠してあるエンシャの鱗が、鎖と擦れてチャリと鳴る。
──目を細めて私は笑った。
それは、心の底から楽しんでいる笑み。
「───さあ、戦力強化といこうか」
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