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そんなこんなでやって来ました図書室(書庫)。
紅い月の日に備えて戦力を強化しようと考えた私は、ふとある事に気づいた。
〝魔法、試してなくね?〟
森にいた時は、詠唱が適当だったのか出来ずに、結局後回しに。エンシャの元にいた時は、それよりも他の知識を優先的に教えて貰っていた。
そして、自分で訓練したのは専ら魔素変換のみ。──魔力があるにも関わらず、魔法を使ったことがないのだ。
幸いここには、魔法書がこれでもかという程ある。そういう訳で、とりあえず読んでみようか、と思い立ったわけだ。
「・・・・・うん、ここら辺かな」
よっ、とごっそり魔法書を引き抜くと、そこだけポッカリと大穴が空いたように本が無くなる。
・・・・・因みに、取ったのは初級魔法に関しての本だけである。
「へーえ、初級魔法っすか」
「・・・・・いい加減、飽きてくれませんかね」
ひょいと覗き込んできた顔を、私は顰めっ面で見上げた。
どうやら、クライシュは私の〝戦力強化〟に興味津々のようで、こうして後を付け回されている。
───全くもって迷惑極まりない。
しかしクライシュは離れること無く、鼻歌交じりに私の手元を覗いては、余計な一言を言ってきた。
「あんな凄い魔法を使えるのに、今更初級魔法なんすね?」
「・・・・・いやほんとに、余計なお世話なんですがそれは」
そりゃあ、あれは魔法じゃないから───とは言えない。クライシュの質問には答えずに、私は適当な場所で腰を下ろした。
ねーねー、と執拗く話しかけて来るのを無視し、1番上の本を手に取る。
さて初めは何かな、と表紙を見た私は、そこに書かれている文字を見て息を呑んだ。
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