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「おかえりなさいませ」
「・・・・・う、うん。ただいま」
相変わらずの無表情。彼女はあの日から毎日、私の自室の前に立っていた。
何を考えているのだろうか──と常々思うが、その表情からは読み取る事が出来ない。特に何をするわけでもなく、ただ観察するように私を見てくるだけだ。
それでも敵意云々は無く、名前を聞いた時も素直に教えてくれた。
ファーファラ=ディアン、という名前らしい。因みに独身女性である。
「お夕食の際はお呼びいたしますので」
「ありがとう、ファーファラさん」
「・・・・・、いえ、これも仕事の内ですので」
どうぞ、と扉が開かれ、私1人だけが中へと入る。付いてこない影に、「あれ、クライシュはいいの?」と思わず聞いた。
───監視役だったフィウストは、迷いなく入ってきたんだけど・・・・・
キョトンとした現監視役にその事を伝えると、突然ぶっと吹き出した。
「ちょ、冗談キツいっすよ!!」
と肩を震わせ、必死に笑いを堪えるクライシュ。
くくく、と破顔したその顔は、普段見せている笑顔とは全く違う。
──本当に笑っている笑顔だ。
「フィーさんが? 本当に?」
「うん、ナチュラルにいたけど・・・・・」
「うっわあ・・・・・いやぁ~フィーさんって実は〝むっつり〟だったんすねぇ・・・・・!!幼いとはいえ、異性の部屋に入っていくなんて」
「あはは・・・・・」
「まー、俺はむっつりなフィーさんとは違うんで、プライベートは立ち入らないっすよ」
クライシュの笑いが、ようやく収まった。何故か、「これでまた弄れるネタが増えたっす!」と喜んでいる。
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