19.戦力強化週間

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その様子を見て、私はただただ苦笑を浮かべるしかなかった。心の中でフィウストに手を合わせておく。 「弄るのも程々にね・・・・・」 「はいはーい。──じゃ、また夕食時に」 「ん、またね」 気のない返事──あの様子では(さぞ)かし面白可笑しく弄られるのだろう。・・・・・嗚呼、可哀想に。 バイバイと手を振り、クライシュに一時の別れを告げる。 ──扉の細い隙間もピタリと閉じられると、そこは1人だけの空間。 誰もいないこの薄暗い部屋にぽつんといる自分、そこだけがやけに黒く(・・)目立っていた。 そう、魔素がやけに── 「・・・・・ああ、電気つけなきゃ」 パチン──スイッチを押すと、魔石から流れた魔力が設置してある魔道具を発動させる。 パッと明るくなった部屋で、私は真っ直ぐベッドへと向かった。 柔らかなソレに身を沈めると、途端に心が安らいでくる。スンスンと顔を押し付けて嗅ぐと、花の甘い香りがした。 そのまま横に投げ出している腕に視線を移す。 「・・・・・黒いなぁ」 自嘲的に浮かべた笑顔で呟いた言葉は無意識。 身体に収まりきれずにはみ出している魔素が、どす黒い渦を作って身体中を巡っていた。───嫌でも思い出してしまう。 どうしてかアレは聞き覚えのあるような言葉だった。 「〝化け物〟ねえ・・・・・やっぱ、幼女が強いと不気味なのかね」 今日で思い知った溝。意外にも、それは奥底まで根付いてしまったらしい。 もし、この状態が変わらなかったら───若干、それが怖いと思う自分がいる。 ──徐ろに両手でパチンと頬を包んだ。 「・・・・・、よし。読むか!!」 よっこいせ、とそのモヤモヤを吹き飛ばすように起き上がる。──今は夕食時までにやる事があるのだ。 心を切り替えて懐から取り出したのは、先程隠した本──『伝説上の希少種族』である。 私の直感が「これだ」と言っている。・・・・・ここに私の正体があると。
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