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「あれ?」
手触りの良い革張りの表紙を撫でていた手が、不意に止まった。目に付いたのは、何かで削り取られたような跡。
題名のすぐ下の一部分だけが、不自然に抉れている。
単に掠れているのではなく、抉れているのだ。
「著者の部分が・・・・・?」
──意図的に削り取られたものだろうか。
疑問を持ちながらも分厚い表紙をめくると、黄ばんだ羊皮紙が現れる。何も書かれていない白紙だ。
なんだ白紙か、と軽い失望感と共に次へといこうとした──その時。
「・・・・・赤い、文字?」
ビッシリと一面に浮かんできたのは文字のような模様。血文字にも見えるそれは、何処か不気味で身震いした。
──唐突にズキリと頭の奥が痛む。思わずこめかみを押さえた。
「・・・・・ぃっ」
ズキンズキンと断続的な痛み。我慢出来ない程ではないが、奥深くに響いてくる。
いきなりどうしたんだろうか。あの文字を見た瞬間──
《───新たなアップデート内容を確認致しました。これよりダウンロードを開始します》
《ダウンロード失敗───ロックがかかっています》
《ダウンロードを中止します。尚、一時保留としました》
《自動ダウンロード設定をします》
《設定完了しました。終了致します》
《───エラー。正体不明のウイルスのようなものを検知。体内に侵入──防げません》
《強制終了致します》
《終了します、終了します、終了します終了終了シュウリョ───》
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