5934人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・・、大丈夫っすか?」
「あーうん、だいじょーぶだいじょーぶ。大丈夫だから・・・・・」
眉を八の字にするクライシュにも、そう答えるのが精一杯で、上手く頭が回ってくれない。ぼんやりとした寝起きの思考で、先程までの事を思い出す。
───確か、図書室から持ってきた『伝説上の希少種族』を読もうと開いて・・・・・それで。
ハッとして自身の腕で抱き抱えている本を見る。中を開いてみると、あの赤い文字は消えていた。
そこにあるのは、何も書かれていない古臭い羊皮紙である。
ホッとする反面、何か期待外れのような気持ちを抱いた。
「──ならいいんすけど・・・・・もう夕食の時間っすよ?」
「何ですと!?」
そして、「それに」と続いてさらっと落とされる爆弾。
「ウェルさんも、待ってるっす」
その発言は、ぼんやりしていた私のモヤモヤを見事に吹き飛ばしてくれた。
サァーっと自分でも顔が青ざめていくのが分かる。
ガタン、と自分の意思よりも先に身体が動いた。本を懐にしまい、落ちるように床へと降りると、備え付けのクローゼットへと急ぐ。
ピシィッと固まった私の表情。
───待たせちゃうのはやばい!!
最初のコメントを投稿しよう!