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「うわーん、ごめんなさいごめんなさい!! すぐ身支度しますー!!」
「あはは、ゆっくりでいいっすよ~」
バタバタする私を見て一笑すると、クライシュは邪魔にならないように部屋を出る。
「終わるまで待ってるっすね」という声を聞きながら、私は用意されていたワンピースを引っ張り出した。
それは、服の少ない私の為にウェルバートが与えてくれたもの。
・・・・・ウェルバート絡みで無料なんて美味い話はなく、当然、費用は私の給料から引かれるが。
「はぁ・・・・・」
口から出ていくため息すら恨めしい。
悲しい哉、暫くは只働きの毎日だろう。・・・・・いや、そもそもまともな仕事をしていなかったか。
───まさかとは思うが、借金は減っていないんじゃ・・・・・。
偶然気づいてしまった事実に、上質な素材で作られたワンピースを持つ手が震える。
今、私の脳内では、借金地獄からの自己破産・・・・・そして首吊りで孤独死──という最悪なシナリオが描かれていた。
あまりにも非現実的───しかし、十二分に有り得る話でもある。
「だめだ・・・・・働かないと」
───・・・・・この社畜の様な台詞を言っているのが5歳児だと、一体どれだけの人が思うのだろうか。
悶々とそんな事を考えながらも、着替えを済ませる。姿見の前でふわりと回り、満足気な笑みを浮かべた。
まるで、夜空を切り取ったかのようなワンピース。
星を思わせる細かく散りばめられた光が、照明を反射してキラキラと輝く。
「ふぅむ、この服も結構可愛いじゃないか・・・・・あいつもセンスあるな」
遠慮して普段着としては着れなかった事が、勿体無いとさえ思えてくる。
・・・・・おかしな話だが、今の自分の姿に慣れてしまえば、この格好も悪くない。
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