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───確かにそう考えるのが自然だ。だけど、このネックレスのお陰で、確証は掴めていないはず。
・・・・・が、あまり良い状況と言えないのも事実。
空の平皿にフォークとナイフを斜めに置くと、私は目の前の人物に言葉を飛ばす。──こんな時は、話題の転換をするのがセオリーだ。
「───時に陛下。一つ聞きたいことが」
紅い瞳がウェルバートを捉えた。無言で先を促すウェルバート。
発言の許可に感謝の言葉を述べてから、本題へと移る。
「私の仕事って具体的には何ですか?」
それはつい先程思い当たった事。そもそも、明確な仕事内容を聞いたことがないのだ。
「・・・・・ほう」
何だそんな事か、と言いたげな表情をしているが、私にとっては重要な案件である。
少し考え込んだウェルバートだったが、ああ、笑顔を見せた。それは何度も見ているもの。
「簡単に言うと、何でもだが・・・・・そうかそうか、そんなに仕事が欲しかったのか」
「いえ、一言も言ってな──」
「それなら、近々ぴったりの仕事がある。お待ちかねの、ちゃんとした仕事だ」
「・・・・・あの・・・」
段々と萎んでゆく語尾。
どうやらこちらの意見は聞き入れてくれないらしい。
まるで新しい玩具を与えられたような笑顔が、一切の言葉を拒絶している。
・・・・・諦めるほかなさそうだ。
大袈裟に吐き出された息が宙に消えていく。不本意極まりない、とあからさまに表に出した。
そのせいか、思いの外低くなった声が口から出てしまった。
「・・・・・仕事内容は何でしょう」
どうせウェルバートの事だ、相当な無理難題を押し付けてくるのだろう──と決めつけていたのだが・・・・・。
悠々と頬杖をつくウェルバートが答えたのは、意外な内容だった。
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