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「明後日来る客人の前でショーを行え」
目を見開いた。
「───それだけ、ですか?」
「・・・・・なんだ、物足りないのか?」
ならもっと厳しい仕事に変えよう、とほざくウェルバートに、いえ滅相もない、と必死な身振りで断る。
気でも変えられたりしたら堪らない。
───・・・・・それにしても。
意外だ、と私はウェルバートの見えない位置で口を押さえた。謎の感動で僅かに手が震えている。
──何か裏があるんじゃないか、とも思ったが、客人にショーを披露するだけなら、何かを仕掛けるなんて事は出来まい。
───・・・・・でも、怪しいんだよなぁ。いや単に、私が疑い過ぎなのか・・・・・?
もしかしたら、本当にそれだけの仕事なのかもしれない。ウェルバートにだって良心の欠片くらいはあるだろう。
そうだな、人を疑うのはよくないな、うんうん──と、半ば無理やり納得した私は、ぱあぁっと満面の笑みを浮かべた。
「喜んでお受けします!!」
「そうか、それは良かった」
ニッコリと柔らかい笑みのウェルバート。
冷たかった瞳が僅かに暖かくなるのを感じて、疑う気持ちもいつの間にか消えてゆく。
ウェルバートの性格を、ほんの少しだけだが見直した。普通な所もあるんだな、と。
しかし、それは間違いで。
───その時はなんとも思わなかったが、その笑みにはやはり裏があったと気づいたのは、実際に客人と出会った時だった。
前言撤回。やっぱりウェルバートは意地悪です。
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