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日付が変わった翌日。私は『必携詠唱集~初級編~』を片手に兵舎へと来ていた。
無論、ただ遊びに来たのではなく、フィウストに聞きたいことがある為である。
それは、魔法の使い方について。
昨日の夕食後、シャワー云々を済ませた私は、雫を滴らせながら必携詠唱集を開いて読み始めた。
〝魔法とは、体内の魔素を練ることで魔力へと変化させ、脳内のイメージを詠唱を媒介として展開、発動するものである〟
魔法書共通で書かれていた内容が、ソレだ。
──言っている事は難しくない。理解も出来る。しかし、何故なのだろうか。
何度やっても、魔法が成功することは1度も無かった。
魔素から魔力へ変える事は難なく出来たが、そこから先が出来ない。
どういう訳か、詠唱呪文を唱えると折角集めた魔力が周囲に霧散し、消えてしまうのである。
心の内で唱えても結果は同じ。
幸いな事に、霧散しただけでは体内の魔素は減らないみたいだが・・・・・これには困った。
変換で賄える自然系ならともかく、無属性に属する魔法──例えば、転移魔法等が使えないのはまずい。
本格的に危機感を覚え始めた私は、手始めにクライシュに聞くことにした。
───しかし返ってきたのは、曖昧な答え。
『魔法の使い方っすか? んー・・・・・バーっとやってグゥイーンって展開するんすよ』
『なるほどわからん』
という訳で、フィウストに会いに来たのだが・・・・・どうやら留守らしい。
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