20.行使不可能

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「もー何でフィーさんに頼るんすかー!! 俺だって、ちゃんと説明したっすよ?」 「あれは説明じゃない。ただの擬音だ」 「ええー・・・・・」 横で不貞腐れるクライシュにトドメの一撃。 ・・・・・頬を膨らませて何やら訴えかけているが、私はただ事実を述べた迄である。 しかし、端で座り込むのは何とも味気ないものだ。 暇で暇で退屈していた私の視界に入ってきたのは、談笑する騎士団員たちだった。 何やら、1人の団員を囲んで盛り上がっているようだ。 「ほら、めっちゃデカくね!? A+ランクの紅華竜だぜ」 ひょい、と下からこっそり覗き込むと、手に大きな魔核持っている。 青──その色はAランクの魔物の核だったはず。 海の底のように濃い青色は透明度が高く、一切のくすみが無い。それに、あの大きさはかなりのモノだろう。 「やべーな、いくらするんだろ」 「うっわ・・・・・今度奢れよ? いいか、絶対だぞ」 「おうよおうよ、全員奢ってやらぁ」 その素晴らしさに、周りから歓声が上がった。見せびらかしている男の方も得意気だ。 それを大人しく見ていた私だったが、ふと、ある(・・)考えが頭に浮かぶ。自然と口角が上がった。 ──なるほど、ああいうのを欲しがるのか。 ───・・・・・折角だから少し、遊んでみよう。 親睦を深める為に───というのは建前で、もちろん本当の目的は暇潰しだ。 と言っても、そんな大掛かりなものではない。単なる取り合い(・・・・)だ。 それも、ただの氷(・・・・)の取り合いである。 ・・・・・その光景を想像しただけで笑いがこみ上げてくる。皆、氷とは思わずに取り合うのだ───ニヤニヤが止まらない。
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