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「もー何でフィーさんに頼るんすかー!! 俺だって、ちゃんと説明したっすよ?」
「あれは説明じゃない。ただの擬音だ」
「ええー・・・・・」
横で不貞腐れるクライシュにトドメの一撃。
・・・・・頬を膨らませて何やら訴えかけているが、私はただ事実を述べた迄である。
しかし、端で座り込むのは何とも味気ないものだ。
暇で暇で退屈していた私の視界に入ってきたのは、談笑する騎士団員たちだった。
何やら、1人の団員を囲んで盛り上がっているようだ。
「ほら、めっちゃデカくね!? A+ランクの紅華竜だぜ」
ひょい、と下からこっそり覗き込むと、手に大きな魔核持っている。
青──その色はAランクの魔物の核だったはず。
海の底のように濃い青色は透明度が高く、一切のくすみが無い。それに、あの大きさはかなりのモノだろう。
「やべーな、いくらするんだろ」
「うっわ・・・・・今度奢れよ? いいか、絶対だぞ」
「おうよおうよ、全員奢ってやらぁ」
その素晴らしさに、周りから歓声が上がった。見せびらかしている男の方も得意気だ。
それを大人しく見ていた私だったが、ふと、ある考えが頭に浮かぶ。自然と口角が上がった。
──なるほど、ああいうのを欲しがるのか。
───・・・・・折角だから少し、遊んでみよう。
親睦を深める為に───というのは建前で、もちろん本当の目的は暇潰しだ。
と言っても、そんな大掛かりなものではない。単なる取り合いだ。
それも、ただの氷の取り合いである。
・・・・・その光景を想像しただけで笑いがこみ上げてくる。皆、氷とは思わずに取り合うのだ───ニヤニヤが止まらない。
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