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てくてくとクライシュの元へと戻ると、騎士団員たちに背を向けた。
しゃがみ込んだ私を見て、クライシュが不審げに見下ろす。
「・・・・・、何やってるんすか」
「えっと、遊ぶ為の餌?」
「・・・・・破壊活動の為の?」
「だーかーらー、遊ぶだけだってば」
・・・・・クライシュは、子供の遊びを何だと思っているのだろうか。全く以て失礼極まりない。
「・・・・・、ホントっすかね・・・・・」
なおも疑うクライシュを無視し、私は指先をくるりと動かした。それに呼応して空気中の魔素が集まってくる。
楕円状に集まった魔素に、少し体内の魔素を混ぜ合わせると、ある形へと変化させていく。
綺麗な平面になるように調整して、
「《魔素変換:氷》───っと」
と小さく唱えれば、殆ど想像通りの形に出来上がった。
見て見て、と笑顔でクライシュの目の前に翳す。
じーっと見つめて、首をかしげるクライシュ。
「───宝石・・・・・じゃないっすよね? 見た目は宝石っすけど・・・・・」
「もちろん、ただの氷だよ」
ああ、と思い当たったようでポンと手を打った。
「あのショーの時の氷っすか」
「うん。───綺麗でしょ」
私の手の中で淡い虹色に反射するソレ。純度が高い魔素で作られた為、透き通った不思議な色合いをしている。
──言われなければ、氷だとは気づかないだろう。
手に伝わってくるひんやりとした冷たさが心地よい。
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