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「よし、行ってくる」
「行ってらっしゃいっす───って、え?」
クライシュは何が何だか分からないようで、自作の氷を持ち意気揚々と騎士団員の元へ行く姿を、呆然と見る。
クライシュには思いつくまい。〝氷争奪戦〟という、さっき適当に考えた〝遊び〟なんて。
───まあまあ、クライシュはそこで見ていればいいんだよ。
私は氷を翳すようにして手に持つと、今も尚賑やかな集団に声を挟んだ。
それは一瞬にして──
「ねーねー、私も仲間に入れて?」
ピタリ、とあれ程までに賑わいでいた話し声が止む。そして、引き攣る笑い。
やや間が空いて、震えた声が場内に響く。
「あ、ああ・・・・・ど、どどどうしたのかな?」
一目見てわかる程の動揺。先日の惨劇を思い出したのか、その目は明らかに泳いでいた。
──・・・・・大丈夫なのだろうか。
予想以上の反応に私も苦笑いしてしまった。
「・・・・・えっと、何で盛り上がってるのかなーって」
「ええっと・・・・・このお兄さんが、凄い魔物を狩ったんだ」
ほら、と示す先には魔核をこっそり隠してしまおうとしている男性。話題の中心人物である。
取られるのが怖いからって、隠して無かったことにしようなんてそうはいかない。
「それなぁに?」
「ぅえっ!?」
───だってもう見えちゃったんだから。
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