20.行使不可能

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「よし、行ってくる」 「行ってらっしゃいっす───って、え?」 クライシュは何が何だか分からないようで、自作の氷を持ち意気揚々と騎士団員の元へ行く姿を、呆然と見る。 クライシュには思いつくまい。〝氷争奪戦〟という、さっき適当に考えた〝遊び〟なんて。 ───まあまあ、クライシュはそこで見ていればいいんだよ。 私は氷を翳すようにして手に持つと、今も尚賑やかな集団に声を挟んだ。 それは一瞬にして── 「ねーねー、私も仲間に入れて?」 ピタリ、とあれ程までに賑わいでいた話し声が止む。そして、引き攣る笑い。 やや間が空いて、震えた声が場内に響く。 「あ、ああ・・・・・ど、どどどうしたのかな?」 一目見てわかる程の動揺。先日の惨劇を思い出したのか、その目は明らかに泳いでいた。 ──・・・・・大丈夫なのだろうか。 予想以上の反応に私も苦笑いしてしまった。 「・・・・・えっと、何で盛り上がってるのかなーって」 「ええっと・・・・・このお兄さんが、凄い魔物を狩ったんだ」 ほら、と示す先には魔核をこっそり隠してしまおうとしている男性。話題の中心人物である。 取られるのが怖いからって、隠して無かったことにしようなんてそうはいかない。 「それなぁに?」 「ぅえっ!?」 ───だってもう見えちゃったんだから。
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