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目の前の醜い争いを見て困ったように息を吐くと、私は、まあまあ、と一旦それを止めた。
「・・・・・幾ら何でもケンカはダメだよ? じゃあね、こうしよう───私からコレを奪えたらあげるってことで」
途端、皆の瞳の中に怯えが見える。
「・・・・・無理だよ」と誰かの声を皮切りに、「あんなのに勝てるわけがない」とあちらこちらから聞こえてきた。
───それでも王宮騎士団員か!?
四方八方から聞こる何とも情けない言葉に、あのねぇ、と頭を抱えそうになってしまう。
息を吐き出すように呟いた。
「・・・・・皆、魔法禁止」
「えっ?」
「私も含めた全員、魔法使うの禁止なの!! 武器もダメだからね!?」
これでどうだ、と胸を張った私の言葉を聞き、顔を見合わせ始める騎士団員たち。
「それなら・・・・・なあ」
「ああ、それならいけるかもな」
「よし、やろーぜ!! 王宮騎士団の底力を見せてやる!!」
あの滅茶苦茶な魔法が無ければ勝算がある───その場にいる全員がそう思った。体術ならば自分たちが勝っているとも。
諦めていた者もやる気に満々に拳を振り上げる。
うおおおおぉ!!と、欲望に塗れた雄叫びをあげる様子は何とも言い難い光景だった。
その盛り上がりについていけない私は、1人寂しく微笑む。
「うん・・・・・まあ、やる気になってくれてなによりかな、うん・・・・・」
───いえ、気になんかしてないですよ全然。
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