20.行使不可能

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──じゃあ、始めよっか。 その言葉で一斉に全員が構えた。真剣な眼差しで、私の手の中にある物を一心に見つめる。 見事に統率のとれた行動──そこは流石と言うべきなのか。 ・・・・・これがただの氷(こんなモノ)の為じゃなければな。 それと、王宮騎士団の底力は是非とも他の場所で発揮してほしい。 少なくともこんな所で発揮するものではないだろう。 自分で撒いた餌とはいえ、なんだかなぁ、と微妙な気分だ。 しかし、ここまでしなければ絶対に参加してはくれなかっただろう。 すぅっと大きく息を吸って、ぎゅっと氷を握りしめる。心地の良い冷たさを感じながら、私は叫んだ。 「開始!!」 響き渡る子供特有の高い声。 その声が広がらぬ内に、ばっと合図もなしに動き出す。 さすがは王宮騎士団員。馬鹿の一つ覚えのように、大勢が一斉に飛びかかるのではなく、ちゃんと少数で連携をとって行動している。 しかし、そうして掴もうと必死に伸ばされた手も空を切った。 「───くそ!! あと少しだったのに・・・・・!!」 「おい、はさみ打ちだ!! 向こうからやれ!!」 「ちっ、ちょこまかと!!」 ひょいと高く飛び上がる度に、ローブの裾がふわりと舞う。 横から伸びてきた複数の手を、くるりと回って避ければ悔しそうな顔が視界に入った。 くすくすと獲物()を見せびらかす。 「ほらほら、おにーさんたち頑張って~」 「・・・・・おちょくりやがってこの野郎!!」 子供に向けて言ってはいけないような汚い言葉を吐いてはいるが、その顔には笑顔が浮かんでいる。 ───純粋に楽しんでいるのだ、これを。 「よし、そっち行ったぞ!!」 「うっし!! 任された!!」 捕まえようとする手から逃れた先に、待ち伏せしている団員。間一髪、体勢を無理矢理変えてそこから飛び退く。 ───だが、当然逃げた先にも。
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