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「さわる、なぁ!!」
「あっ」
苦し紛れに身体を捻ると、上手いことに男が服から手を離した。───しかし、もうそこは人の海の中。
囲むようにして次々と現れる団員たちを見て、小さく舌打ちを打つ。このまま逃げるばかりでは不利だ。
「くらえ!!」
どうしたものか、と考えた時に出された握り拳。
幼女のお腹目掛けて飛んできたそれを、最小限だけの動きで避ける。
そして、飛びかかりざまに軽く手を握り、1人の団員の腹へ一発───反射的に殴ろうとして、すんでのところで威力を殺した。
軽く当たる小さな拳。
それでも、ぐぇっとカエルが潰れたような声共に男性が吹っ飛ぶ。一人二人ぶつかった所で、やっとその勢いが消えた。
唖然とその様子を見ていた男性が叫ぶ。
「攻撃するなんて聞いてないぞ!?」
「正当防衛だもん」
「いやあれは、過剰防衛・・・・・」
「幼女に手を出した方が悪いのー!!」
唐突な批判も、そう言えばすぐに聞こえなくなった。当然だ、先に手を出したのはあちらである。
そして、その台詞を聞いて生まれる一瞬の隙。勿論、それを見逃す私ではない。
空いた空間に飛ぶと少し余裕ができた。餌をチラつかせて、騎士団員たちの反応を楽しむ。
「ほらほら、こんなのも取れないのかなぁ?」
───楽しい。こうして皆で遊ぶことが、楽しい。
自然と表情も明るくなってくる。数十分もすれば、何となくだが打ち解けたような気もした。
私を含めた全員の顔は、晴れ晴れとした笑顔。───・・・・・まあ、その表情からは想像が出来ないほどの死闘が繰り広げられてはいるが。
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