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「これで通じる事がお決まりなのに・・・・・フィーさんったらわかってないなぁ」
「・・・・・俺が悪いのかこれ」
悪くねーよな・・・・・、と真顔で一人呟くフィウストに、「まあまあ」と無理やり手に氷を握らせる。
騎士団員共はスタミナ切れで倒れてしまったので、結局手元に残ってしまったのだ。
自由に作り出せるのに、持っていても仕方がない。
「あ゛? 何だこれ」
何の警戒もなく受け取ると、彼は怪訝そうに手の中の物体を見た。
──不思議な輝きを持ち、魔力を含んだ冷気を放つモノ。
「───魔核か? にしては冷てぇな・・・・・」
「違うんだなぁーこれが」
やはり、氷というよりも魔核に見えるらしい。
少し首を捻って考えていたフィウストだったが、先程の台詞を思い出し、ああと手を打った。
〝氷の取り合い〟
「まさか、これがその氷か!?」
「そのとーり。察しがいいね」
「・・・・・道理で見たことない色をしている訳だ」
まじまじとそれを見る。その色は、彼の記憶の中の魔核と全く合っていなかった。
そして、視界に入る屍と化した騎士団員。
──忽ち、フィウストの中でパズルのピースが当てはまる。
目の前の光景と氷を交互に見て、呆れたように頭を抱えた。
「まさか、脳筋どもは氷と気づかずに取り合いを・・・・・」
「いやーほんと馬鹿だよねー」
棒読みで笑った私の肩に、ポンと手が置かれる。
見ると、クライシュがニコニコして立っていた。とても自然に会話に加わってくる。
「でも、普通は気づかないっすよ!!」
「───あ、クライシュだ。一人で寂しかったの?」
さらりと言った言葉が、クライシュに突き刺さった。「図星か」と、それを聞いたフィウストも追い打ちをかける。
フィウストの言葉通り、それは図星らしい。
一人で居て寂しかったのだと言い当てられ、クライシュの目尻に涙が溜まる。
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