20.行使不可能

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「・・・・・宜しく」 その一言以上は何も言わず、黙って視線を合わせるのみ。──元々無口なのか、それとも話す必要性を感じないのか。 ───ああ、この人が植物園の・・・・・。なるほど、自宅警備員では無かったのか。 精霊魔導師ならばあの魔力量にも頷ける。下級であっても精霊と対話するには、それなりの魔力を必要とする筈だ。 ・・・・・そして、ここに来てやっと、クライシュの言っていた事が何となくわかってしまった。 無表情だからということもあるが、本当に何を考えているのか読み取れない。 全く変わらないロレンシオの様子を伺いながら、恐る恐る「あの、魔法を教えてください」と頼んだ。 しかし。 「・・・・・無理」 ──その言葉は直ぐに遮られた。 ボソリと呟かれたのは拒絶。歩み寄ろうとした足がピタッと止まる。ドクドクと心臓がうるさく跳ねる。 それってどういう───そう聞こうと開きかけた口は、ロレンシオの言葉によって再び塞がれた。 「だって・・・・・皆、怖がってる・・・・・から」 たどたどしい言葉───それがロレンシオの口調なのかもしれない。 柔らかい彼の声は、聞いているだけで落ち着くものだが、今の私にとっては余計に不安を積もらせた。 ぎゅっとローブを握りしめ聞く。 「怖がってる・・・・・?」 「ん、そう・・・・・怖いって」 〝何〟が怖がっているのか。言葉足らずのロレンシオに、その様子を見ていたベルセルトが補足した。 「───ロレンシオ先生は精霊が見えるからさ。多分、精霊が怖がってるんじゃねーの」 そう言って本人を見ればこくんと頷く。そして、一生懸命に言葉を付け足した。
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