5934人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・・宜しく」
その一言以上は何も言わず、黙って視線を合わせるのみ。──元々無口なのか、それとも話す必要性を感じないのか。
───ああ、この人が植物園の・・・・・。なるほど、自宅警備員では無かったのか。
精霊魔導師ならばあの魔力量にも頷ける。下級であっても精霊と対話するには、それなりの魔力を必要とする筈だ。
・・・・・そして、ここに来てやっと、クライシュの言っていた事が何となくわかってしまった。
無表情だからということもあるが、本当に何を考えているのか読み取れない。
全く変わらないロレンシオの様子を伺いながら、恐る恐る「あの、魔法を教えてください」と頼んだ。
しかし。
「・・・・・無理」
──その言葉は直ぐに遮られた。
ボソリと呟かれたのは拒絶。歩み寄ろうとした足がピタッと止まる。ドクドクと心臓がうるさく跳ねる。
それってどういう───そう聞こうと開きかけた口は、ロレンシオの言葉によって再び塞がれた。
「だって・・・・・皆、怖がってる・・・・・から」
たどたどしい言葉───それがロレンシオの口調なのかもしれない。
柔らかい彼の声は、聞いているだけで落ち着くものだが、今の私にとっては余計に不安を積もらせた。
ぎゅっとローブを握りしめ聞く。
「怖がってる・・・・・?」
「ん、そう・・・・・怖いって」
〝何〟が怖がっているのか。言葉足らずのロレンシオに、その様子を見ていたベルセルトが補足した。
「───ロレンシオ先生は精霊が見えるからさ。多分、精霊が怖がってるんじゃねーの」
そう言って本人を見ればこくんと頷く。そして、一生懸命に言葉を付け足した。
最初のコメントを投稿しよう!