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チラチラと横にいるであろう〝何か〟を見ながら、
「・・・・・ん、〝魔素〟が怖い・・・・・って。なんか、違う・・・・・って、だから・・・・・多分」
一度言葉を切る。───次の言葉は、私の心臓を締め付けた。
「魔法・・・・・使えない」
──ずん、とショックで途端に重くなる身体。
信じられないとロレンシオの顔を見るが、ただ彼は残念そうに首を振るだけ。
───魔法が・・・・・使えない?
意外にもその衝撃は大きかった。
魔素を練る事で魔力へと変換する事は個人でも出来るが、それを魔法にする事は少し勝手が違う。
精霊の力を少し借りる必要があるのだ。
魔法詠唱呪文───そこには、自身の魔力をどのような目的で使いたいかが示されている。
それを唱える事で、魔力の一部と引き換えに精霊が『魔法』を完成させてくれる。
当然、その協力に条件などない。魔力の一部さえ与えれば、精霊は契約などなくても無条件に力を貸す。
『魔力をあげますから、手伝って下さい』───詠唱呪文がそう伝えているからだ。
──ファンタジーといえば魔法、魔法といえばファンタジー。
転移魔法で遠くへ移動したり、或いは空を飛んだりだとか、幻惑を見せたりだとか・・・・・───可能性は無限にある筈だったのだが。
───それが全て無くなったのだ。
『魔素変換』という魔法に似たスキルはあるものの、異世界だから、と『魔法』を楽しみにしていた気持ちも少しはあったのだ。
前世界から離れ、この世界にもようやく慣れた頃───よりによってそんな時に、知ってしまうなんて。
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