20.行使不可能

21/23
前へ
/387ページ
次へ
チラチラと横にいるであろう〝何か〟を見ながら、 「・・・・・ん、〝魔素〟が怖い・・・・・って。なんか、違う・・・・・って、だから・・・・・多分」 一度言葉を切る。───次の言葉は、私の心臓を締め付けた。 「魔法・・・・・使えない」 ──ずん、とショックで途端に重くなる身体。 信じられないとロレンシオの顔を見るが、ただ彼は残念そうに首を振るだけ。 ───魔法が・・・・・使えない? 意外にもその衝撃は大きかった。 魔素を練る事で魔力へと変換する事は個人でも出来るが、それを魔法にする事は少し勝手が違う。 精霊の力を少し借りる必要があるのだ。 魔法詠唱呪文───そこには、自身の魔力をどのような目的で使いたいかが示されている。 それを唱える事で、魔力の一部と引き換えに精霊が『魔法』を完成させてくれる。 当然、その協力に条件などない。魔力の一部さえ与えれば、精霊は契約などなくても無条件に力を貸す。 『魔力をあげますから、手伝って下さい』───詠唱呪文がそう伝えているからだ。 ──ファンタジーといえば魔法、魔法といえばファンタジー。 転移魔法で遠くへ移動したり、或いは空を飛んだりだとか、幻惑を見せたりだとか・・・・・───可能性は無限にある筈だったのだが。 ───それが全て無くなったのだ。 『魔素変換』という魔法に似たスキルはあるものの、異世界(ファンタジー)だから、と『魔法』を楽しみにしていた気持ちも少し(・・)はあったのだ。 前世界から離れ、この世界にもようやく慣れた頃───よりによってそんな時に、知ってしまうなんて。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加