5934人が本棚に入れています
本棚に追加
「だ、大丈夫だよ。魔力はあるんだし、魔法陣は使えるんじゃない? ね!」
「そ・・・・・そうだな、魔法陣も中々楽しいぞ」
力が抜けたように呆然と立ち尽くす私を、何とか励まそうとベルセルトやルーシュが言葉をかけるが、その声すらも届かない。
───そんな時。
「・・・・・ぁ」
不意にソレが治まった。まるで何も無かったかのように、先程の衝撃が無くなっている。
そう、感情の起伏が〝無い〟のだ。あの出来事が嘘と錯覚してしまう程、不思議と心が落ち着いている。
───・・・・・おかしいな。さっきまでは、あれ程ショックを受けていた筈だったのに。
強制的に戻されたような感覚に、若干の違和感を感じた。───もう、何も思わない。思う事ができない。
「・・・・・大、丈夫?」
再び鼓動が高まった───その時、上から落ちてきた柔らかい声。頭の上に大きな手が乗せられる。
ゆっくりと優しく撫でられた。突然の事に、跳ねるように顔を上げる。
「え、あ・・・・・大丈夫、です」
「・・・・・そう? ほん、と・・・・・に?」
その柔らかな声に、ぽわんと心が暖かくなった。もう大丈夫だと笑みを返すことで、心配するロレンシオに応える。
・・・・・無表情で分かりにくいが、きっと優しい性格なのだろう。出会ってからまだ短時間ではあるものの、何となくそれは感じ取る事が出来た。
ありがとう、とお礼を伝えると、ロレンシオの顔が僅かに緩んだ気がした。
───そうだ、ここで立ち止まっていても仕方がない。
最初のコメントを投稿しよう!