20.行使不可能

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「だ、大丈夫だよ。魔力はあるんだし、魔法陣は使えるんじゃない? ね!」 「そ・・・・・そうだな、魔法陣も中々楽しいぞ」 力が抜けたように呆然と立ち尽くす私を、何とか励まそうとベルセルトやルーシュが言葉をかけるが、その声すらも届かない。 ───そんな時。 「・・・・・ぁ」 不意にソレ(・・)が治まった。まるで何も無かったかのように、先程の衝撃が無くなっている。 そう、感情の起伏が〝無い〟のだ。あの出来事が嘘と錯覚してしまう程、不思議と心が落ち着いている。 ───・・・・・おかしいな。さっきまでは、あれ程ショックを受けていた筈だったのに。 強制的に戻されたような感覚に、若干の違和感を感じた。───もう、何も思わない。思う事ができない。 「・・・・・大、丈夫?」 再び鼓動が高まった───その時、上から落ちてきた柔らかい声。頭の上に大きな手が乗せられる。 ゆっくりと優しく撫でられた。突然の事に、跳ねるように顔を上げる。 「え、あ・・・・・大丈夫、です」 「・・・・・そう? ほん、と・・・・・に?」 その柔らかな声に、ぽわんと心が暖かくなった。もう大丈夫だと笑みを返すことで、心配するロレンシオに応える。 ・・・・・無表情で分かりにくいが、きっと優しい性格なのだろう。出会ってからまだ短時間ではあるものの、何となくそれは感じ取る事が出来た。 ありがとう、とお礼を伝えると、ロレンシオの顔が僅かに緩んだ気がした。 ───そうだ、ここで立ち止まっていても仕方がない。
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