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自身が落ち着いたのを確認してから、息を吐く───手元には『伝説上の希少種族』という文字、そして抉り取られた作者名。
私は知らなければならないのだろう。───希少魔族を・・・・・私の正体を。その総てを。
本をローブの内ポケットにしまうと、私は立ち上がった。
「───まずは明日のショーだな」
ウェルバートに言われた仕事も近いし、魔法陣も試してみたい。
・・・・・当面の目的は決まったが、やらなければいけない事はある。とりあえず、それを片付けてからだ。
「クライシュ~ごめんね、勝手に行っちゃったりして~」
ドアを開け、そう言いながら前を向く。そんな私の視界に入って来たのは、険しい表情をしたクライシュとファーファラ。
ピリピリと重苦しい空気に眉をひそめた。只事ではない雰囲気が漂っている。
「2人ともどうした───」
──その先の言葉は出てこなかった。
その視線を辿った私は息を呑む。目の前にいる人物に釘付けになってしまった。
──その姿はまるで女神。
「あら、ごきげんよう」
優雅に一礼して、奥から近づいてきた彼女は言う。白くうねった髪を揺らし、口元に浮かべる微笑はとても優しそうにも見える。
───しかし。
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