21.白の魔女

9/18
前へ
/387ページ
次へ
自身が落ち着いたのを確認してから、息を吐く───手元には『伝説上の希少種族』という文字、そして抉り取られた作者名。 私は知らなければならないのだろう。───希少魔族を・・・・・私の正体を。その(すべ)てを。 本をローブの内ポケットにしまうと、私は立ち上がった。 「───まずは明日のショーだな」 ウェルバートに言われた仕事も近いし、魔法陣も試してみたい。 ・・・・・当面の目的は決まったが、やらなければいけない事はある。とりあえず、それを片付けてからだ。 「クライシュ~ごめんね、勝手に行っちゃったりして~」 ドアを開け、そう言いながら前を向く。そんな私の視界に入って来たのは、険しい表情をしたクライシュとファーファラ。 ピリピリと重苦しい空気に眉をひそめた。只事ではない雰囲気が漂っている。 「2人ともどうした───」 ──その先の言葉は出てこなかった。 その視線を辿った私は息を呑む。目の前にいる人物に釘付けになってしまった。 ──その姿はまるで女神。 「あら、ごきげんよう」 優雅に一礼して、奥から近づいてきた彼女は言う。白くうねった髪を揺らし、口元に浮かべる微笑はとても優しそうにも見える。 ───しかし。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加