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「・・・・・まあ。ふふふっ、お仲間だなんて珍しいですわね。お会いできて嬉しいですわ」
彼女を埋め尽くすように存在している魔素は───黒色。
それに、彼女が放った言葉は。
「───なか、ま?」
「ああ、これは秘密ですのね! 失礼しましたわ、こちらの話ですの」
ふふ、と何が面白いのか、彼女は口に手を当てて笑う。綻ばせた顔は、やはり美しい。
だが、場の雰囲気は和みはしない。二人とも険しい顔で、じっと女性を見据えている。
硬い声でクライシュが問いかけた。
「・・・・・何者なんすか、あんた」
あら、と頬に手を添える女性。まるで、この険悪な雰囲気に気づいていないかのように、にこやかに答える。
「これは申し遅れましたわ。私の名前はアリス=モードレッド、ここの王宮魔術師総長──グラーフ=オルディオ氏に招待されましたの」
そのアメジスト色の瞳が楽しそうに細められた。ドレープ状になったドレスの裾を揺らしながら、軽く手を合わせて喜ぶ。
怪訝そうにクライシュは反応した。
「・・・・・、グラーフさんの? ファーファラさんは聞いてるんすか?」
「・・・・・ええ、一応は」
無表情で頷く。事前にこのことは知っていた───そもそも、その様子を隠れて見ていたのだから、当然と言えば当然である。
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