21.白の魔女

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ファーファラが肯定したことで、クライシュの警戒心が若干解かれたようだ。肩の力は抜かれたが、見定めるような視線は変わっていない。 そうか、彼女の黒い魔素を感じ取っているのか。 「・・・・・そうなんすね。んで、どこに行くんすか?」 「ちょっとオルディオ氏に聞きたいことが・・・・・でも、急用ができましたわ」 そう言うと、彼女は私のすぐ前まで近づく。後ずさりした私の顔に、甘い吐息がかかった。 「───ねえ、少しお話してもいいかしら」 優しい口調ではあるが、有無を言わせない響き。覗き込まれた瞳に、私の顔が映りこんだ。 ───こくり、そう頷く事しか出来ない。・・・・・これは美人故の威圧感なのだろうか。 「ありがとう」と、笑顔で部屋の中に入るアリス。 それに続こうとした私に、クライシュが心配そうにこちらを見るのが目に入った。 「・・・・・大丈夫」 そう答えた後もクライシュの顔は晴れない。監視対象とはいえ、流石に気になるのだろう。 キィ、と音を立てて閉じる直前まで、クライシュは黙って見ていた。 ・・・・・そして完全に閉じられる扉。私は改めて、自分のものでは無い魔素の塊(・・・・)を見つめた。 「まあ、素敵なお部屋ですのね!」 部屋に響く高い声。空気が読めないソレには、まるで初めて友達の部屋に遊びに来たかのような明るさがある。 私はソファーに座ると、対面の席を手で促す。アリスは上品にそこへ腰を下ろした。膝の上に手を乗せ、落ち着いている様子である。 ───これはまさに綱渡り、しかし良い機会(チャンス)でもあるかな。 彼女は恐らくエンシャを襲った本人・・・・・なのだろう。エンシャの体内にあった魔素は、きっと彼女のものだ。
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