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そんな彼女がここにいるということは、もしかしたらエンシャは───もう。
・・・・・いや、逃がしたのかもしれない。そうだと信じたい。
───大丈夫だ、きっと。
彼女に対する怒りがない訳では無い。腸が煮えくり返るくらいその怒りは強い───が、それも一瞬だけ。
───再び、感情の起伏というものが無くなってしまった。
これは推測にすぎないが、魔族故のものではないだろうか。もう、そうとしか思えない。
・・・・・本当に私は、どうかしてしまったようだ。
───それでも今は、この機会を上手く利用しなければ。希少魔族について知ることが出来るこのチャンスを。
ウェルバートとは違った緊張感が場を満たした時、ようやく私は沈黙を破った。
「───単刀直入に聞きます。あなたは〝希少魔族〟ですか?」
「ええ、4分の1程ですわ」
あっさりとその事実を認める。その顔は涼しげに微笑んでいた。
───やはり、か。しかし、何故絶滅したはずの種族がここに・・・・・?
本の表記ミスとはあまり思えない。そうなると、どうしてもその謎が残ってしまう。
しかも4分の1という言葉。残りは普通の魔族だというのだろうか。
血は絶えていない、のか。
優雅に彼女は笑う。
「・・・・・貴方もでしょう?───膨大な黒い魔素が見えますもの。人工かしら、それとも生まれつき?」
───人工?
その言葉に戸惑いながらも、私はアリスの質問に答える。
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