5934人が本棚に入れています
本棚に追加
その前にアリスは、『人工』か『生まれつき』かとも聞いていた。つまり、黒い魔素は後からでも定着可能──ということだ。
そうなると、突然変異種の血を引く者は、『生まれつき』の可能性が高い。───そして、彼らは複数いるのだろう。
・・・・・あくまでも推測だ。確信はない。俄に信じ難い点もあるものの、敵方に聞けるほどの余裕はない。
その時。
「───まあ、マナーを知らない下等生物がいますのね」
唐突に、アリスの表情がさっと険しいものへと変わる。やや低くなった声が鋭く尖った。
辺りを見回すアリスに、恐る恐る声をかける。
「アリスさん・・・・・?」
「・・・・・壁にメアリー、ですわ」
そう言うと、しぃーっと口元で人差し指を立てるアリス。
何がなんだかわからぬままに周りを見れば、不自然に広がっている白い魔素。
そして、右手に魔力を集め始めるアリス。
見る見るうちに体内の黒い魔素が渦を巻く。あっという間に球になるソレに、若干の寒気を覚えた。
「・・・・・アリスさん?」
「───私たちを隔離なさい、《遮断》」
その声に応じるかのように、アリスの手の中から黒い球が上へと飛び出す。
そして天井まで上がると、四方八方にその身を分散させた。
最初のコメントを投稿しよう!