5934人が本棚に入れています
本棚に追加
弾けてドーム状へと形を変えるソレは、私たちを包み込むようにして落ちてくる。
やがて周りを全て覆い隠した時、アリスが笑顔を咲かせた。
「───さあ、これでもう安心ですわ」
「・・・・・、ありがとうございます」
不自然だった白い魔素はもう見えない。黒色しか見えないのだ。
この部屋を覆うように囲んでいた白い魔素───あれはいったい誰のだったのだろうか。
───確かなのは、その選択が二択に絞られること。
「───どうかなさいました?」
「いえ・・・・・」
私は目の前にゆったりと座るアリスを見る。
・・・・・何か魔法が使われていたのは間違いない。そして、アリスがそれを防いでくれたのだろう。
そんな彼女が敵なのもまた事実。
その姿はどこまでも人間臭いが、その正体はイカれた魔族なのだ。
───しかも、突然変異種の血を引くというおまけ付き。
流石にこんな所で襲う──なんて、感情任せの馬鹿げた行為はしない。
少なくとも、向こう側が友好的である今は。
もう時間ですわ、と立ち上がったアリス。私はそれに続いた。ニッコリと表面上の笑みを浮かべる。
「本当にありがとうございます。こんな素敵なものを・・・・・」
「いえいえ、宜しければまたご利用下さいませ。同族の方の活動は、応援するのが普通ですもの───特別に割引致しますわ」
「あはは、それはどうも・・・・・」
これ程嬉しくない割引きも珍しい。
・・・・・今度、表向きのお店だけ利用させてもらおう。
最初のコメントを投稿しよう!