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彼女の周りだけ避けるように、不自然に広がっている炎。その勢いは止まず、永遠に燃え続けるのではないか、という錯覚さえも与えてしまう。
外へと避難する直前、炎の海の中心で黒焦げの何かと相対する彼女は確かに───笑っていた。
───そう、笑っていたんだ。それも心底楽しそうに。
・・・・・酷い匂いが漂っているであろうフィールドで、自分が倒した魔物の前で、炎の中で。
あの笑顔が頭に焼き付いて消えない、あの狂気じみた幼女らしからぬ笑顔が。
本能から来る恐れ、それは同僚たちも同じらしい。闘技場から離れても尚、少女が来るのではないか、と気にする者もいる。
───強者ぞろいのはずの騎士団が、だ。ただの少女一人に怯えるとは、何と滑稽な事か。
団長に並ぶホンモノに出会って、疲労困憊状態の団員たちに、闘技場修理のために模擬実戦練習は暫くお預けという悲しい知らせが届いたのはすぐの事だった───
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