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『───あげよっか?』
宝石のようなソレを掲げてコウが言う。彼女が言うには、奪い取ればその人にあげるとのこと。
───脳筋の集まりと言っても過言ではない僕らは、すぐに食いついた。・・・・・それが馬鹿げた行動だったのは言うまでもない。
そうして始まったのは、ただ一つのものを寄ってたかって幼女から奪うという、傍から見ればとても悪いことをしているようなゲーム。
数十名VS一名───それは明らかにこちらが有利。すぐに勝負はつくと思っていた・・・・・が。
あちらこちらから聞こえてきた悲鳴は、こちら側のものだった。
『───くそ!! あと少しだったのに・・・・・!!』
『おい、はさみ打ちだ!! 向こうからやれ!!』
『ちっ、ちょこまかと!!』
───素早い。とにかく掴めないのだ・・・・・掠りすらしない。
段々と団員たちの顔に焦りが見えてくる。・・・・・魔物相手ではなく、人間──それも幼い少女にすら追いつけないという事実が彼らを焦らせていた。
魔物ではなく、人間。人間の少女なのだ。・・・・・───いや。
───・・・・・本当に人間・・・・・なのか?
どろりとした感情。昨日の惨劇・・・・・そしてこの状況下が、僕の思考をぶれさせる。
───実は化け物なんじゃないか。そうだ、昨日ありえないものを見たじゃないか。
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