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何事も無くウェルバートとの夕食を終え、やっと自由時間となったその日の夜。
───これがテンプレートという奴なのか・・・・・
私は借りた魔法語の辞書を前にして驚愕していた。ふかふかソファーに深く身を落とし、魔法照明付きの天井に目を向ける。
間違いない。これは何十年と付き合ってきた文字だ。
そう、そこに書かれていたのは───漢字。
・・・・・なのだが。
「何で行書!?」
いつも目にしているカクカクとした文字ではない。無論、明朝体やゴシック体などと読みやすい字体でもない。
行書なのだ。
読めなくはないが、見なくても書けるかと聞かれると・・・・・恐らく書けない。
せっかく転生者という前世を活かせるかと思っていたのに。
「これじゃあ、この辞書を何とかして手に入れなきゃなぁ・・・・・」
あくまでもこれは借り物。紅い月の日が終わったら、ルーシュに返さなければならない。
面倒だな、と私は息を吐いた。
───なら、今の間に魔法陣を使いこなさないと。
この辞書はご丁寧に、魔法陣のやり方までわかりやすくまとめてある。表紙を捲った次のページだ。
〝魔法陣について〟
そうデカデカと書かれた題目の下には、簡易的な説明。
〝まず初めに魔物の皮などの基本的な媒介に、魔力が含まれたインクで特定の型を描く〟
〝次に魔法語と呼ばれる特殊な文字を組み合わせ、型に当てはめて書けば完成〟
〝魔力を流し込むことで発動する〟
───ルーシュに教えて貰った通りの説明だ。
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