22.お披露目会

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何事も無くウェルバートとの夕食を終え、やっと自由時間となったその日の夜。 ───これがテンプレートという奴なのか・・・・・ 私は借りた魔法語の辞書を前にして驚愕していた。ふかふかソファーに深く身を落とし、魔法照明付きの天井に目を向ける。 間違いない。これは何十年と付き合ってきた文字だ。 そう、そこに書かれていたのは───漢字。 ・・・・・なのだが。 「何で行書(・・)!?」 いつも目にしているカクカクとした文字ではない。無論、明朝体やゴシック体などと読みやすい字体でもない。 行書なのだ。 読めなくはないが、見なくても書けるかと聞かれると・・・・・恐らく書けない。 せっかく転生者という前世を活かせるかと思っていたのに。 「これじゃあ、この辞書を何とかして手に入れなきゃなぁ・・・・・」 あくまでもこれは借り物。紅い月の日が終わったら、ルーシュに返さなければならない。 面倒だな、と私は息を吐いた。 ───なら、今の間に魔法陣を使いこなさないと。 この辞書はご丁寧に、魔法陣のやり方までわかりやすくまとめてある。表紙を捲った次のページだ。 〝魔法陣について〟 そうデカデカと書かれた題目の下には、簡易的な説明。 〝まず初めに魔物の皮などの基本的な媒介に、魔力が含まれたインクで特定の型を描く〟 〝次に魔法語と呼ばれる特殊な文字を組み合わせ、型に当てはめて書けば完成〟 〝魔力を流し込むことで発動する〟 ───ルーシュに教えて貰った通りの説明だ。
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