5934人が本棚に入れています
本棚に追加
魔法陣を練習して数十時間。
ようやく完成に満足したその時、その日は迎えた───・・・・・
「───こちらです、コウ様」
初の仕事当日。私は、相変わらずの塩対応であるファーファラに案内され、大広間へとやって来ていた。
クライシュが言うには、今回は客人とウェルバート、それから側近数名のみに見せるためのものらしい。
・・・・・つまりは、大臣もアリスという大臣の客人もいないと言う。
───・・・・・こっちの方が気が楽だな。大勢は息が詰まってしまう。
偶然か、それとも誰かの計らいか・・・・・それはわからないが、有難いものだ。
「お待たせいたしました」
流れる動作で私は中央へと進み出る。顔を上げた先には、立派なソファーに腰掛けるウェルバートと、その横で同じように座っている女性。
くすんだ桃の長髪は先が緩やかに巻かれ、垂れた朱色の瞳がこちらを窺っている。
まだ若い。───ウェルバートと同い年くらいだ。
「随分遅かったな。・・・・・まあいい、彼女の名はフレデリカ=ツォーレン。───またの名を〝銀朱の守人〟と言う」
「・・・・・・・・」
紹介された彼女は、何故か私を見て固まっている。若干頬を赤くしているフレデリカに、おい、とウェルバートが肩に手を置いた。
途端に跳ねる身体。
目を爛々と輝かせた彼女は、ガタンと興奮して立ち上がる。
「───ロリっ!! ロリだわ!!」
その美しい声で叫ばれた言葉に、私は悪寒を覚えた。
・・・・・嫌な予感しかしないのは何故だろう。
最初のコメントを投稿しよう!