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「何よ、私の恋路を邪魔する気かしら?」
「そんなことに興味はない。勝手にしてもらって構わない───が」
さすが美人。顔の美しさが、更に怒りの迫力を増している。声だって先程までの甲高いものではなく、また一段と低いものだ。
その声にちらほらと見える棘。ウェルバートは眉一つ動かさずにそれを受け流すと、顎を引いて口角を上げた。
「───お前は見たくないのか? ・・・・・幼女のショーを」
「・・・・・くっ!!」
『幼女』という部分だけを強調して、ウェルバートは言う。
───ロリコンにとってはあまりにも甘過ぎる単語。フレデリカの心が揺らぐ。
・・・・・一方の私は、二人だけの世界を目の前にして、ただただ呆れていた。
───なーに、やってんだ二人とも・・・・・
間に挟まれた私にとってはとんだ茶番である。
「───もうっ・・・・・わかったわよぅ・・・・・」
渋々と名残惜しそうにフレデリカが体を離す。ようやく息苦しさから解放され息を吐いていると、「でもっ!!」という大声が大広間に木霊した。
「闘技場の結界の修理費・・・・・あれは全額この場で支払ってもらうわ!!」
フレデリカの視線の先には、薄く笑うウェルバート。二人が無言の攻防をする中、私は突然の状況に呆然としていた。
───結界の修理費・・・・・だって? ・・・・・まさか、このロリコンが?
ひょいとフレデリカの後ろから顔を覗かせてみると、肘をつきこちらを見下ろすウェルバートが頷いた。
「そういえば、言ってなかったな。フレデリカは銀朱の守り人───結界術師の専門家だ」
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