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「・・・・・まあ」
フレデリカが驚きの声を漏らした。
天井付近に浮かぶのは、所謂火の玉と呼ばれるもの。それが揺らめき、氷の竜の肌に青白い光を反射させる。
しかし、これで終わりではない。
私は火の玉に目を取られている二人を確認し、上に向けて手を伸ばした。
「魔法陣、展開」
その言葉を口にした瞬間手から魔力が伝わり、事前に設置しておいた魔法陣が発動する。
暗闇に散りばめられているのは、直径2cm程の魔法陣。
───小さな光となっているそれが、瞬間、弾け飛んだ。
「・・・・・ほう、なかなかのものだな」
これにはずっと黙っていたウェルバートでさえも、感嘆のため息をついた。
フレデリカや後に控えていたフィウスト、それにクライシュも同じように目の前の光景に見惚れる。
───それは正しく満点の星空のような。
クリスタルを思わせる輝きを持つ竜の頭上には光が弾ける夜空、そして周りを照らすのは青白い炎。
「《解》」
最後に存在感を放つ氷竜を細かく分解すれば、キラキラと氷の破片が宙に舞う。
ようやく全ての仕掛けを終えた頃には、フレデリカは思わず立ち上がっていた。
放心したように呟くフレデリカ。
「・・・・・凄い、凄いわ」
「楽しんでいただけて何よりです」
ぺこりと小さくお辞儀をして、二人を見上げる。ウェルバートが、珍しく不思議そうな表情で聞いた。
「───あれは魔法か?」
「さあ、どうでしょう」
魔法と言えば魔法の分類には入るが、魔法陣だとは思いつきもしないだろう。
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