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私が展開した全ての魔法陣。あれらは、魔法陣は仕掛けたその場で発動するという決まりを本で知り、考えたものだ。
『小・炎・揺・短』の四文字で火の玉、『小・光・弾』の三文字で星を表した魔法陣。
濃度の高い魔素を使えば破れるような柔な羊皮紙ではなく、媒介となるのは空気中の魔素そのもの。
・・・・・これなら、型が壊れる心配はない。
そこへ、自身の黒い魔素で魔法陣を描いた。
───などとタネばらしをしても、信じてくれるわけがない。
あはは、と誤魔化し笑いを浮かべた所で、ウェルバートの表情が変わった。
・・・・・笑顔を見せたのである。それもとびきりの。
「───なるほど、白を切るつもりか」
「いえいえそんなまさか・・・・・ねぇ」
とんでもない、と勢いよく横に首を振った私。てっきり問い詰められると思ったが、意外にもウェルバートはあっさりと諦めた。
「ああ、別にいいぞ? 無理して教えなくても」
「へ? いいんですか?」
驚いてそう聞けば、ニヤリとウェルバートが口角を上げた。・・・・・嫌な予感しかしない。
そして、案の定その嫌な予感というものは当たってしまうのであった。
「───まあ、その代わり紅い月の日は外に出れなくなるがな」
「え」
「残念だったな。せっかく、儲け時だったのに」
ま、普通冒険者ランクの持たない子供は参加禁止なんだがな、と肘をつくウェルバート。その余裕そうな笑みが、更に私をムカつかせる。
───言ったじゃん、出てもいいって言ったじゃん。
さすが大人、汚い。
・・・・・しかし、三食+寝床を提供して貰っている身として、あまり逆らうような真似はできない。それに、ウェルバートの言う通り、せっかくの稼ぎ時だろうし。
一つため息をついた私は、仕方なしに答える。
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