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「・・・・・魔法陣、です」
「魔法陣だと?」
「はい、それ以上でもそれ以下でもありません」
私の表情から嘘ではないと判断したのか、ウェルバートはそれ以上の追及を止める。
・・・・・もしかしたら、勘づいたのかもしれない。
下がっていいぞ、の声で私は大広間の外へと放り出された。つまりは用無し、ということだ。
クライシュに促され、大広間を離れる。どうだった、とクライシュに聞くと、良かったっすよ、と変わらぬ笑顔を見せてくれた。
「・・・・・あれ、本当に魔法陣なんすか? 一体どういう仕組みで───」
そこまで言いかけたクライシュに向けて、私は唇に人差し指を当てる。しぃーっとその言葉を止めた。
「タネばらしをしちゃあ、面白くないでしょ? それに、あれは魔法陣だよ。ちょっと材料が違うけどね」
「・・・・・フィーさんの弟さんから、貰ったものは」
「結局、使わなかったね。後で返しておくよ」
不意にクライシュの歩みが止まった。どうしたのか、と顔を覗き込むと、驚愕した表情を浮かべている。
「・・・・・、使わなかったんすか」
「そうだね」
「・・・・・一滴も?」
「うん。───後はご想像にお任せするよ」
さあ行こうと先を歩けば、クライシュは無言で着いてくる。何かを考えているようだった。
・・・・・思いの外、早く見破られるかもしれない。それでもまあ、追い出されないだけマシだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にかファーファラが待つ客室へと戻っていた。
いつも通りの無表情で、彼女が挨拶する。
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