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「おかえりなさいませ」
ただいま、と塩対応の彼女に笑顔で返す。・・・・・今の所、ファーファラが表情を変えたところを見ていない。
仮面を外すのは根気が入りそうだ等と考えつつ、未だに考えている様子のクライシュに手を振った。
「クライシュもまた後でね。・・・・・考え詰めるのも良くないよ?」
「えっ、は、ああうん。・・・・・そっすね、良くないっすよね」
私の台詞に流されるクライシュに、畳み掛けるようにして更に言葉を重ねた。
「うんうん良くない良くない。・・・・・んじゃ、そんな時は他の人と話したらいいと思うよ!! ほら、ロレンシオ先生とかロレンシオ先生とか」
「選択肢が弟さんしかいないんすけど・・・・・」
「───というわけで、ついでにこれを返してきてくれる?」
すっとドアの隙間からインク壺を見せると、見るからに嫌そうにするクライシュ。本当に彼にはいい思いをしていないらしい。
「・・・・・いやっすよ、絶対いやっす」
絶対、という一部分のみの強調。そっかと失望するでもなく、悲しむでもなく、私はあっさりとインク壺を戻した。
・・・・・借りたものを返す為に、他人を使うつもりは毛頭ない。
クライシュが意外そうな顔をしているが、これぐらいは普通である。・・・・・本当に私のイメージというものはどうなっているのだろうか。
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