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「・・・・・あー、うん。大丈夫大丈夫。自分で借りたものを、他人に返させるわけがないじゃない。・・・・・後日、ちゃんと自分で返してくるよ」
「・・・・・、意外っすね。俺はてっきり───」
「流石に、これくらいは自分でやるから!! ・・・・・じゃ、また後で」
───ロレンシオ先生はあげると言っていたが、高価なものを無料で貰う訳にはいかない。
若干乱暴にドアを閉めると、私はずんずんと真っ直ぐにベッドへ向かう。勢いをつけてそこに飛び込めば、柔らかな感触が私を包んだ。
ふかふかベッドに顔を埋める。・・・・・本当にここは居心地が良い。
───・・・・・監禁されるのか、それともこのままなのか。
ロレンシオから借りたインク壺を片手で弄びながら、息を吐いた。───その時。
「王宮魔導師総長グラーフ=オルディオじゃ。コウ殿はいるかの?」
コンコンという短いノックの後にしわがれた声。どこか聞いたような名前に首を傾げていると、扉が開かれ一人の老人が入ってくる。
・・・・・白い髭が特徴的なその顔は、確かウェルバートに初めて会った謁見の間にいたような。
恐らくは、ショーを披露する際に同席していたのだろう。
「何か私にご用ですか?」
なんの警戒心もなくベッドから降り、グラーフの前まで進む。その歩みをグラーフは片手で止めた。
「いや、大した用ではない。王宮入り記念として、贈り物をしようと思ったのじゃ」
「贈り物・・・・・ですか」
そう言うグラーフの顔はあまり毒気がない。決して優しげというわけでもないが、敵意は無さそうに見える。
───手袋を嵌めた手で懐から取り出した物を見て、私は目を見開いた。
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