23.創作魔法陣

10/13
前へ
/387ページ
次へ
「ある職人に作らせた一品じゃよ」 銀で出来たブレスレットに、細かく掘られた花の模様はまるで本物のようで。・・・・・鮮やかに見えるような錯覚さえも覚える。 ───しかし、驚いたのはその技術ではない。 「これは・・・・・」 ごくり、と喉が鳴る。 黒い魔素。───それが込められていたのだ。 「どうじゃ、気に入ったかの? ・・・・・ならばぜひ、つけてみて欲しいのぅ」 背筋を襲う若干の身震い。 だが、グラーフはその事に気づかず聞いた。続けて発せられた言葉に再び息を呑む。 「───この場で」 「・・・・・っ」 目の前に差し出されるどす黒い腕輪。私にとっては、美しい銀細工であろうソレが醜いものに見えた。 「いえ、そんな勿体無い・・・・・」 「そんなことは気にしなくていいんじゃよ。それよりも、ぜひ腕に付けてみて欲しいのぅ」 ずいっとやけに執拗く勧められる。・・・・・それもそうなのかもしれない。明らかに怪しいのだから。 それでも拒否するわけにはいかず、震える手でソレを受け取れば、それを見たグラーフは口元を歪めた。 「・・・・・」 手に取って改めてわかる───これを身につけるのは危ない、と。 自分のものでは無い魔素が、粘りつくように私の肌を伝い侵入しようとしてくる。 今は自分の魔素で防いではいるが・・・・・。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加