23.創作魔法陣

11/13
前へ
/387ページ
次へ
───・・・・・ああ、でも。 絡み合うその黒い奔流を見下ろし、暫しの間顔を俯かせる。 ・・・・・もしかしたら、と閃いた。この黒いものが魔素なら。───そう、この魔素が〝術〟そのものだったなら。 私はそっと小さく唇を動かした。 「・・・・・《解》」 ───やっぱ思った通り。媒介は何でもいい、大切なのは魔素だった・・・・・ってわけか。 その言葉を呟いた瞬間、あれだけ激しかった魔素の勢いは弱まり、私の意思通りに散らばっていく。───腕輪から離れた魔素は、自然と姿を消していった。 残されたのは、只のブレスレット。 綺麗に施された花の彫刻は、もう〝黒く〟ない。 漸く俯かせていた顔を上げ、グラーフにニッコリと笑いかける。 「オルディオさん、どうもありがとうございます」 「・・・・・あ、ああ。礼には及ばんよ」 突然表情を変えた私を見て、グラーフは少し驚いたようだった。一瞬だけ目を見開き、ブレスレットを持つ私を見下ろす。 さあ、腕輪を付けようか───そう思った時だった。その言葉を思い出したのは───。 『ここの王宮魔術師総長──グラーフ=オルディオ氏に招待されましたの』 ・・・・・その台詞を言ったのは誰だったか。そうだ、あれは確か・・・・・。 ピタリと腕輪を嵌めようとした手が止まる。完全に思い出した、忘れもしないあの女性。 ───・・・・・アリス=モードレッド、だ。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加