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「あの子の噂を牽制として他国や冒険者に広めるのかしら?───それとも、私に何かさせるつもりなのかしら?」
あのウェルバートがわざわざ見せてきたのだから、それなりの理由はあるのだろう。
どうだ、と満足げに推論を言い切ったフレデリカが見たのは、深々とわざとらしいため息をつくウェルバートの姿だった。
考えすぎだ、と顔を顰めて息を吐く。
「───別に俺は、お前に何かをやらせようとはしていない。ただ、相手が幼女ならマイナスになる行動はしないだろう?」
「・・・・・、確かにそうね。相手があんな可愛い子じゃあ、酷いことはできないわ。それに大人びているけど、力以外は本当の子供みたいだし」
「・・・・・今のところは、何も問題起きていない。正体に関しては少々気になる所はあるがな」
「気になる所?」
紅茶を飲みながら、フレデリカが聞く。横に座るウェルバートの表情には、若干の不安が見えていた。
ティーカップをテーブルに置き、フレデリカに言葉を返す。
「───母親らしき人物がいない。それどころか、家も親戚自体もないようだ。・・・・・本当に、突然街中に現れた、としか言えない」
「・・・・・つまり?」
「人間かどうかも怪しい、ということだ」
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