5934人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言い切ったウェルバートの脳内には、先日見たとある本が浮かび上がっていた。
『伝説上の希少種族』
突然本棚に現れ、そしていつの間にか消えていた本。───そこに載っていた情報はどれも常識外れで信じ難いものだったが、何故か記憶に引っかかっていたのだ。
まさかな、とあの頃は切り捨てたものでも、後々になってその可能性が見えてきたのである。
「───で? もし、人間じゃなかったら? ・・・・・すっぱり切り捨てるのかしら?」
こちらを伺うフレデリカに、まさか、とウェルバートは鼻で笑った。
「せっかく手に入れた玩具だ、簡単には手放さない」
「・・・・・でしょうね。聞いた私が馬鹿だったわ」
額を押さえて深く息を吐くフレデリカ。───そうだった、この男はこういう性格だった。
「それに例え目的があるなら、力任せにでも達成するだろう。それが成されていない、という事は、あいつはこの状況に満足している」
「・・・・・まあ、そういうことになるのかしら」
「恐らく、目的は不自由のない衣食住と金・・・・・くらいか。───もし隠れて何かをするようであれば、躊躇なく殺すつもりだ」
「その為のクライシュ君?」
ウェルバートは無言で頷く。それは肯定の意。
なるほどね、とフレデリカは納得する。人間ではないかとしれない存在を監視するには、もってこいの人材だろう。
最初のコメントを投稿しよう!