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「───違う種族、ねぇ?」
ウェルバートの言葉を聞いて、あの少女の姿を思い浮かべる。
見た目は普通の少女のようだった。魔素の量は多いとは感じるが、他に気になる点はなかった。
「私には人間に見えたけど・・・・・もし、幻属性の魔法なら相当高度なものよ。そんな魔法が扱える種族なんて、かなり限られてくるわ」
「・・・・・心当たりはないか?」
「高度な幻属性魔法、そしてそれを維持できる量の魔力。・・・・・残念ながら人間と考える方が現実的ね」
コウはここへ来てから随分と経っている上に、常時監視がついている状態だ。魔法を解く暇は、ない。
フレデリカが言うには、可能性があるのはSランク以上の種族ということ。それこそ伝説の種族とかになってしまうらしい。
伝説、と聞いてウェルバートが再び思い浮かべたのはあの古びた本。
普通の種族に可能性はない。なら、伝説となった種族ならば。
「───希少種族、という種族を聞いたことがあるか?」
Sランク冒険者としても名高いフレデリカなら、知っているかもしれない。
僅かな期待だったが、その回答は違う意味で意外なものだった。
───その問いを聞いたフレデリカの顔が強ばったのである。
「・・・・・なんで貴方が知っているの? 希少種族に関しての文献は、この国にはないはずよ」
小さいけれども力強い声。驚愕の表情を顔に浮かべて、フレデリカは息を潜めるようにして話す。
そこにただならぬ雰囲気を感じたウェルバートが、眉をひそめた。
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