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フレデリカも〝銀朱の守り人〟としてのコネを利用して情報を得ていたが、それでも知ることが出来たのは僅かな情報のみだ。
その1冊でそれ程の情報が込められているとなると、一部の者にとっては喉から手が出る程、欲しいと思うに違いない。
その一部の者の悔しがる顔を思い浮かべ、笑みを漏らしたフレデリカだったが、こちらを見つめるウェルバートを見てすぐに笑みを消した。
「───なら知ってると思うけど、その〝希少〟は絶滅したのよ。今では全く見かけないらしいわ」
「絶滅していないとしたら?」
「・・・・・何ですって」
「もし、彼女が希少種族だとしたら、これまでの事に説明はつくか?」
ウェルバートに言われて、フレデリカは押し黙った。今までのことを思い出す。
Sランクの魔物の攻撃さえも防ぎ切る結界の破壊、人間の擬態の為の高度な幻属性魔法の維持、そして。
───今さっき見た摩訶不思議なショーだって。
フレデリカは無意識に身震いした。あくまでも可能性のひとつに過ぎないのに、パズルのピースが当てはまったようにしっくりくる。
「説明がつくんじゃないか?」
「確かに辻褄は合うけどっ・・・・・そんなわけないでしょ!? 希少種族は絶滅したのよ!! それに、あの子が希少種族という証拠だって・・・・・」
荒らげた声は思いの外大きく響き渡った。はっと我に返り再び声を小さくする。
「と、とにかく私は信じないわ。可能性はゼロに近い・・・・・」
「だが、ゼロではない」
芯の通った声に遮られ、フレデリカが口を噤んだ。観念した風に小さく両手を上げる。
この男にはどこか頑固な部分がある。ここまでくると中々自分の意見を変えないだろう。
ここで言い合っても不毛、そうフレデリカは考えた。
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