5934人が本棚に入れています
本棚に追加
/387ページ
「はいはい、わかったわよ・・・・・。可能性は無きにしも非ず、でしょ?」
「そうだな」
ようやく満足気な笑顔を見せたウェルバートの横で、やっとか、と息を吐いた。
───希少種族説も完全に否定できる訳では無い。
確かに、人知を超えた力を説明するならば、その者が人知を超えた存在とするのが手っ取り早いのも事実。
───でも、人間を超えた存在は勇者だけで充分だわ・・・・・。
以前立ち寄ったアチェレッタ王国。そこで見た勇者を思い出し、思わず痛くなったこめかみを押さえる。
フレデリカが知っている数でも、勇者は3人程いる。その中でも飛び抜けた存在が1人。
魔物増加の原因とされている魔王を倒すために異世界召喚された筈だが、それが牽制云々・・・・・人間の戦争の道具に利用されているのは如何なものか。
───ああ、これでまた戦況がひっくり返るのだわ・・・・・アホのせいで。
唐突に、ウェルバートが「どうした」と怪訝そうに見る。「大丈夫」と若干顔を顰めながら答えた。
「バカ勇者のことを思い出してただけ・・・・・それより、あの子が希少種族だとしたら何の種族なのよ?」
「そこまでは分からない。・・・・・ただ、気になる追記はあったぞ」
そう言うと、ここへ来て初めて楽しげな微笑を見せる。それだけで、フレデリカの心には嫌な予感が胸一杯に広がった。
知りたいが、知ってしまったら・・・・・なにか面倒事が起こる気がする。
最初のコメントを投稿しよう!