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「知っている・・・・・って何を?」
「希少魔族のことだ」
フレデリカは昔読んだ資料を思い出す。確かに知っていることには知っているが。
「私が知っていることなんて限られているわ。・・・・・角に模様、尻尾が生えている、通常魔族の上位互換・・・・・くらいかしらね」
指折り数えるも、本当に僅か過ぎて片手で足りてしまった。これでも知っている方である。知らない人は、存在すら知らないのだから。
フレデリカの心に興味が湧いた。期待を込めた視線をウェルバートに送る。
「・・・・・他に何か書いてあったの?」
「いや・・・・・知らないのなら、尚更教えられないな。情報だってタダじゃないんだ」
「ええーここまで来てそれはないでしょ!? 長い付き合いじゃない・・・・・だから、ね?」
「・・・・・、媚びても無駄だということは、お前がよく知っているだろう」
「ちぇーけちぃ」
そう言うと、口を尖らせ立ち上がる。どこへ行くんだ、とウェルバートが聞くと、闘技場、とフレデリカは素っ気なく答えた。
「直しに行くのよ、直しに!! どっかの誰かさんがケチんぼだから!!」
「・・・・・そうか、ちゃんと直してこいよ」
「仕事に私情は挟みませんよーだ!!」
べーっと、半ば八つ当たり気味にフレデリカが返す。怒ってますよ、という雰囲気を漂わせながら去ろうとする背中に、「一つ聞きたいんだが」とウェルバートが問いかけた。
「───あの結界に必要な魔力はどれくらいだ?」
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