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───矛盾している。
聞こえないほどの微かな声で、「・・・・・どういうことだ」とウェルバートはぼやく。
希少魔族だという確信が揺らいだ瞬間だった。イライラとすつきりしない気持ちだけが続いていく。
不意に、クライシュの顔が思い浮かんだ。天然パーマがくるくると跳ね、何が不満なんだか子供のように口を尖らせている。
そういえばこんな様子前にあったな、などと思っていると、脳内のクライシュが口を開いた。
〝言ったじゃないすか、オレ。あの子供の魔素は何処か可笑しいって〟
───瞬間。
「・・・・・そうか」
ウェルバートの口角が、ニヤリと上がった。・・・・・扉の側で待機していたフィウストが、ソレに身震いしたのは言うまでもない。
途端、フィウストの顔が強ばった。その視線の先には、口に手を当て肩を震わせる皇帝の姿。
まるで、不気味なものでも見るような視線がフィウストから送られてくるが、考え事に集中しているウェルバートは気づかない。
口角は更に上がる。
───そうだ。・・・・・そもそも、体内にもつ魔素自体異なるものなのではないか?
その推測が確信へと変わろうとした───その時だった。
「大変です、ウェルバート様!! クライシュ様が中庭で───」
息せき切ったメイドの1人が飛び込んでくる。無礼だとフィウストが止める間もなく、倒れ込むようにして彼女は叫んだ。
「───っクライシュ様とコウ様が、中庭で戦っています!!」
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