25.相対

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「あら」 凍りついたように棒立ちになる私に対し、アリスは空を見上げて独りごちた。 日傘を差し直し、胸元のネックレスを持ち上げる。 その先には小さい転移石が。 「もうこんな時間・・・・・私はそろそろ───」 「待って・・・・・ください」 別れを言いかけた彼女に、私は短く制止の声をかけた。 踵を返そうとしたアリスの動きが止まる。 「・・・・・お願いがあるんです」 橙がかった紫の瞳を静かに見上げた。 二人の間に流れたそよ風がアリスの白髪を揺らし、銀色に光らせる。 「何ですの?」 アリスは少し驚いていた。それは、少女──コウの印象があまりにも違っていたから。 あの時とは違い愛想笑いすらない顔、そして刃物のように鋭い視線。その紅い瞳は静かな怒りが篭っていた。 「その人形、私のなんです。───返してくれませんか?」 「・・・・・まぁ、そうでしたの」 ニッコリとその視線を受けて尚、微笑み続けるアリス。 私は八の字に眉をひそめる。本当に表情が読めない。 困惑したその時、「コウちゃん!!」と男性にしては少し高めの声が背後から聞こえた。 振り返らなくても分かる───クライシュだ。 「こんなとこにいたんすか・・・・・いきなり、飛び出して何を───」 軽く響いていた足音が後ろで止まる。タイミングがタイミングの為に、私は眉を八の字にしかめた。
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