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「・・・・・っ」
若干トーンが下がった声。黒々とした雰囲気に呑まれそうになり、無意識に後ずさってしまう。
絶対これ、やばいやつだ。
「・・・・・何で、いきなり」
「だってそうでしょう? ・・・・・私の大切な、たぁーいせつなお人形さんを盗ろうとする悪い子は殺さないと」
苦い顔で捻り出した疑問も、理解できない回答で片付けられてしまった。
お仲間でも、泥棒さんはお仕置きですわ───ふふふ、と楽しそうに笑うアリス。
「そうですわ」と、まるでいい事でも思いついたかのように、彼女はポンと手を合わせた。
弾んだ声でこちらへと近づく。
「私以外の同族さんがどう戦うのか、前々から興味がありましたの」
「じゃあ、ここで・・・・・」
やるのか、と一瞬身構えたが、アリスは戦意を微塵も感じさせない仕草で「でも困りましたわ」と息をついた。
「私、これから愛する子供たちに、お夕飯を作らなければならなくって・・・・・残念なことに、お相手が出来ないんですの」
その代わりに、彼が相手をしてくれますわ。
アリスが最後にそう言った台詞。〝彼〟という言葉が指している人物に、ふと思い当たった。
「・・・・・まさか」
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